ハチドリ工房の理念
日本の木を活かしきり、世界の森を温存する
ハチドリ工房って何してるところ?
自然素材工房はちどり(ハチドリ工房)は、鳥取県八頭郡八頭町に拠点を置く小さな木工所です。
「きらめ樹®」(*1)という皮むき間伐を取り入れ、杉や桧の人工林の間伐を行っています。
皮むき間伐「きらめ樹」
皮むき間伐とは、木が活発に成長する春から夏の時期に樹皮(形成層)をむくことで、木を伐り倒さずとも木を伐ることに相当する間伐効果が得られる間伐方法です。木は皮をむかれると葉と根との間の命の脈が絶たれるため、枝葉はゆっくりと枯れ落ち、空には光が差し込む空間が空くことで木を伐ったことに相当する間伐効果が得られる、という仕組みです。
竹べらと木槌を使って樹皮をむく作業は女性や子どもも行うことができるため、全員参加型で行える間伐作業です。
皮むきから1年後、伐採。そして”木の6次産業化”
皮をむいてから約1年後、皮むきされた木は伐採されます。立木のままで天然乾燥が進んだ丸太は生木に比べて半分以下の軽さ。作業道や林内作業車を必要とせずに搬出することができる場合が殆どです。木工所に運ばれた丸太は簡易製材機で自家製材され、二次天然乾燥を経て最終加工されます。こうして作られた製品は、法人/個人を問わず、販売させていただいております。
私たちが使わせていただいている細い間伐材は、既存の木材市場に当てはめると売上よりも経費の方が高くつくなどの理由から、山林に切り捨てられることが多い木です。
私たちは、間伐した木を森に切り捨てることはせず、伐採、搬出、製材、加工、販売をすべて独自に行う”木の6次産業化”に取り組くむことで、既存市場では価値のないとされる木を活かすこと、いただいた木の命や山を守り育ててくれた先人達への感謝と共に、木を大切に使わせていただくことを大切に活動しています。
なぜ皮むき間伐をしているの?
日本の森のはなし
現代の日本は、国土面積の7割を森林面積が占める、世界有数の森林大国。その中には人が植樹などにより手を加えている”人工林”と呼ばれる森林も多く、人工林だけで国土面積の3割を占めていると言われています。
針葉樹の植林を伴う林業は今から約400~600年前、北山や吉野、智頭などの歴史のある林業地から始まったとされています。当時は、寺社仏閣建築などに使用する木材生産が大きな目的であり、また治山・治水の観点も取り入れられていました。
近年の林業にとっての大きな転換期の一つが、終戦後の「拡大造林政策」でした。終戦当時、建築材などの需要が高まるという期待感から、国策として杉や桧などの針葉樹が日本中に植えられました。
しかし、その後の木材の貿易自由化や急激に進む円高などの影響を受けて外材が多く輸入され始めると、日本の木材自給率はみるみる低下し、日本の木材自給率は2002年には18%台まで低下。2012年には30%台まで回復したもの、2021年現在でも30%台の低水準を推移しています。
つまり日本には、「将来の孫子の世代のために」と植林されたものの時代の変化と共に見向きされなくなり、人から忘れられ、荒れてしまっている森がたくさんあります。放置された針葉樹の単相林は、木材生産性の低さ、生物多様性の乏しさ、治山治水力の低さ、土砂災害の懸念、下流域や海へのミネラル供給力機能の低下など、様々な問題が指摘されています。
海外の森のはなし
ここで海外の森に話を移します。先ほど木材自給率の話に触れましたが、6割以上を輸入に頼っている日本にはどこから木が供給されているのでしょうか。
結論から言うと、日本は東南アジアや南米の熱帯雨林や、ロシアや北米のタイガ針葉樹林、ルーマニアなどの北欧の原生林など、様々な国から木材を輸入しています。その木材の輸出国では、膨大な面積の原生林が破壊され、人々の伝統的な暮らしや動物たちの住み家が奪われ、その跡地に作られるアブラヤシの大規模農園の労働者の人権侵害が問題になるなど、多くの連鎖的な問題があると言われています。
その中での日本の実態は、世界の木材物流の5割に関わっていると言われるほどの”世界最大の木材輸入国”であり、”世界最大の原生林破壊国”であると言えます。
私たちの暮らしへの関わり
こうして運ばれて来た木材は見た目が綺麗な合板などの建築材や、ティッシュペーパーや紙おむつなどの紙類製品として、またアブラヤシから作られるパーム油は安価な食用油や食品添加物、界面活性剤などとして、私たちの暮らしに密接に関わっています。つまり、私たち一人ひとりの選択が、原生林破壊に間接的に関わっているといえます。
ただし、問題を問題と捉えて提起するだけでは解決にはほど遠く、私たちの日々の暮らしの中での選択を変えることが、とてつもなく大きく感じる問題の唯一の解決策なのではないかと、私たちはかんがえています。
*1 「きらめ樹®」はNPO法人 森の蘇りの登録商標です。
ハチドリ工房のヒト
和田康平
自然素材工房はちどり 代表
1987年2月生まれ 鳥取県八頭町 出身
2020年12月に約12年間勤めた造船会社を33歳で退職し、地元鳥取県八頭町にUターン。
2021年3月に「自然素材工房はちどり」を立ち上げ、鳥取県内を拠点に間伐による山の手入れ、自家製材業、木工製品加工、販売を独自に手掛ける「木の六次産業化」に取り組む。
ハチドリ工房の名前の由来
自然素材工房はちどり(愛称はハチドリ工房)という名前には、2つの由来があります。
ひとつは、ハチドリ工房の拠点である鳥取県八頭町の地名に因み、鳥取の『トリ』と八頭の『ハチ』で『ハチドリ』といただきました。
もうひとつの由来は、南米アンデス地方に伝わる「ハチドリのひとしずく」というお話。
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森が燃えていました
森の生きものたちは われ先にと逃げていきました
でもクリキンディという名のハチドリだけはいったりきたり
口ばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは火の上に落としていきます
動物たちがそれを見て「そんなことをして いったい何になるんだ」といって笑います
クリキンディはこう答えました
「私は、私にできることをしているだけ」
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日本に眠る膨大な面積の人工林。僕が山に入ることで蘇らせられる森はそのうちのほんの一部、0.000001%くらい。一見、そんな意味ない事やってどうするの? だけど、一点のやましさも無い、自分の魂が歓ぶ、やりたいことを楽しんでやるんです。神様は自分の中に。
~『ハチドリ工房』の由来 終~